競争優位戦略とは
競争優位戦略とは、1980年に米国のマイケル・ポーター(ハーバード大学教授)が「競争の戦略」で提唱したフレームワークであり、競合企業との生存競争に勝ち、競争優位性を確保し続けるための経営戦略である。
競争優位戦略の目的は、3つある。
- トップマネジメントが、自社が戦っている経営環境を把握すること
- 将来、現在の経営環境がどう変化するかを推察すること
- 独自性のある強力なポジショニングを獲得できる戦い方を考え実践すること
競争優位戦略は、3つの基本戦略がある。コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略の3つである。
コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略とは、製品やサービスの製造コストや販売コストを競合他社よりも下げることで、競争優位性を保つ戦略である。競合他社よりも安く顧客に提供することで、市場占有率を拡大することができる。
競合他社よりも低コストで製品やサービスが提供できれば、競合他社が同じ価格水準に下げてきた場合でも、収益を上げることができる。また、市場占有率を高められれば、仕入コストを低減させられるため、更に低コストで製品やサービスを提供することができる。
コスト低減の手法は、規模の経済の追求(生産量を拡大させ固定費を効率化させる)や経験による労働生産性改善や工程の効率化(経験曲線)を追求する、技術開発やノウハウによるコスト削減の追求などの取組みが考えられる。
差別化戦略
差別化戦略とは、自社が提供する製品やサービスに、競合他社とは異なる機能やデザイン等で優位性を構築し、高価格で販売する戦略である。差別化が実現できれば、競合他社の低価格戦略による過当競争から脱却することができる。
差別化によってブランド価値が向上し、顧客とのつながりが強くなるため、競合他社が真似することは困難であり、更に競争優位性を確立することができる。代替品に対する対抗力も高い。
差別化の源泉は、ブランドイメージや独自技術、製品性能やデザイン、顧客サービス、販売チャネルなどが挙げられる。独自のビジネスモデルによる差別化など、競合他社との違いと自社の強みを磨き上げる戦略と言える。
集中戦略
集中戦略とは、特定の顧客セグメント、販売チャネル、製品やサービスの種類、エリアなどに経営資源を集中させ、特定ターゲットに向けて低コストもしくは差別化、あるいはその両方を実現しようとする戦略である。ニッチ戦略とも呼ばれ、市場が小さすぎるため、大企業が参入しづらく、過当競争にならないメリットがある。
中堅・中小企業の戦略として最も親和性の高い考え方であり、小さい市場で大きな市場占有率を獲得することで、安定的な利益を獲得する方法として採用される。
競争優位戦略の活用方法と注意点
中堅・中小企業が競争戦略を活用する際の典型的なシーンを紹介するとともに、注意点を整理する。
中堅・中小企業における活用シーン
1.中期経営計画の策定
典型的な活用シーンとして、中期経営計画を策定する際に使うことが挙げられる。競争優位戦略のフレームワークを活用し、成長戦略を検討する。
但し、中堅・中小企業の多くは、コストリーダーシップ戦略を採用することは難しい。規模の経済を実現するためには巨額の設備投資が必要となるため、大企業に適した戦略になる。そのため、差別化戦略か集中戦略のいずれか、もしくは両方を検討することが一般的となる。
2. 製品戦略の策定
重点製品のマーケティング戦略を策定する際に使うことが考えられる。自社の独自性を明確化するとともに、競合他社との差別化ポイントを描き、営業・マーケティングの実行計画を描く時に有用である。
技術立脚の製品開発を行っている中堅・中小企業の場合は、販売部門だけでなく、技術部門や開発部門も協働で討議をして欲しい。競争優位戦略のフレームワークを活用して、競争優位性を確立できる領域、組織能力、強みは何かを明確にすることをお勧めする。
3. 支店戦略・営業戦略の策定
販売部門に支店を配置し、顧客カバーを行っている企業においては、支店戦略や営業戦略を検討する際にも活用することができる。
特に、差別化戦略は、競合他社とは異なる営業・マーケティングのアプローチを検討することが重要である。御用聞き営業に対して、問題解決型営業で対抗する、もしくは御用聞き営業を徹底して集中的に行うなど、差別化戦略と集中戦略の両方を検討したい。
中堅・中小企業における注意点
マイケル・ポーター教授が提唱した競争優位戦略のフレームワークは、競争戦略の一要素であることを留意する必要がある。競争優位戦略は、いかにして高業績を持続させるかを論点とした戦略論であり、一つのフレームワークだけで解決しようとはしていない。
バリューチェーン分析、5フォース分析などを通じて、競争環境の把握と自社のポジショニングをいかに確立するかなど、多様な論点がある。複合的な分析によって競争戦略を検討する必要があるため、競争優位戦略のフレームワークもその一つとして活用して欲しい。