SDGs17目標の進捗状況
1. 貧困をなくそう
新型コロナウィルス拡大、インフレの高騰、ウクライナ戦争の影響により貧困対策の期待効果は後退している。2030年に向けて新たな前提と追加施策が必要となる可能性がある。
- 新型コロナウィルス感染症により貧困対策における4年分以上の前進が帳消しになった
- インフレの高騰とウクライナでの戦争により前進の軌道からさらに外れる
- 2022年に極度の貧困状態にある人々の数は、コロナ禍前の予測が5億8,100万人に対して、現在の予測は6億5,700万人~7,600万人と増加
- 低収入労働者の割合が20年ぶりに上昇(2019年6.7%から2020年7.2%へ)
- さらに800万人の労働者が貧困へと追いやられた
- 2020年の災害関連死はコロナ禍の影響により6倍に増加
2. 飢餓をゼロに
貧困同様に、紛争やパンデミックの影響を受けて、食料安全保障は不安定になっている。特に、食料価格高騰の影響は大きく、ウクライナ危機により最貧困層の食料不足は拡大する可能性がある。
- 紛争、新型コロナウィルス感染症、気候変動および不平等の拡大により世界全体の食料安全保障が弱体化
- 世界のおよそ10人に1人が飢餓に苦しんでいる
- 約3人に1人が十分な食料を定期的に得られていない(2020年)
- 食料価格高騰の影響は、47%の国に及ぶ(2019年の16%から増加)
- 1億4,920万人の5歳未満児が発育阻害に苦しむ(2020年)。子どもの発育阻害を2030年までに50%削減するには、年間減少率を2倍にしなければならない (年間2.1%から3.9%に)
- ウクライナ危機が世界の最貧困層の食料不足の引き金に(ウクライナとロシア連邦は世界に食料を輸出:小麦は30%、トウモロコシは20%、ヒマワリ種子製品は80%を占める)
3. すべての人に健康と福祉を
コロナ禍に必須医療サービスの混乱が起こり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の前進も停滞する可能性がある。アフターコロナを見据えた新しい医療体制とオペレーションの見直しが必要。
- 新型コロナウィルス感染症は、グローバル・ヘルスにおける数十年間の前進を脅かしている
- 2,270万人の子どもたちが2020年には基本的なワクチンを未接種(2019年から370万人増加)
- コロナ禍により最前線で働く11万5,500万人の医療従事者の命が奪われる
- 結核による死者数が2005年以来初めて増加(2019年は120万人に対して、2020年は130万人)
4. 質の高い教育をみんなに
新型コロナウィルスの影響は教育機会にも大きな影響をもたらしている。学習危機や不平等の拡大など、従来の課題がさらに深刻化する可能性がある。ポストコロナにおける教育格差を解消するための新しい施策が不可欠となる。
- コロナ禍により、世界的に学習の危機が深刻化
- 1億4,700万人の子どもが対面指導の半分超を受けられず(2020-2021年)
- 2,400万人の学習者(就学前から大学レベルまで)が復学できない可能性あり
- 教育における根深い不平等がコロナ禍にますます悪化
- 世界全体の小学校の25%で電気・飲料水・基本的な衛生施設が不足、50%でパソコン・インターネットアクセスが不足
5. ジェンダー平等を実現しよう
性別による差別をなくし、男女が対等に権利と機会と責任を分けちあえる社会を目指しているが、要職の割合などは改善しているものの、変革スピードは遅い。
- 女性と男性が平等に国の政治的リーダーシップを代表するようになるまでの年数は、現在のペースのままだと更に40年かかる見込み(各国議会における女性の割合は、2015年で22.4%に対して2022年で26.6%)
- 女性は雇用者全体の39%を占める(2019年)一方で、世界の失業者の45%を占める
- 女性の4人に1人超が生涯で少なくとも一度以上、親密なパートナーによる暴力を経験(6億4,100万人)
- ジェンダーに配慮した予算編成の強化が必要(ジェンダー予算の配分を追跡するシステムがある国の割合:包括システムがあるのは26%、システムの一部の機能があるのは59%、システムの最低限の要素もないのは15%)
6. 安全な水とトイレを世界中に
地球温暖化や人口増加を背景とする水資源問題と、安全安心に飲料水を利用できる環境を整備と管理という2つの視点で、非常に大きな課題が存在し、環境課題と密接に関係している。
- 世界の水に関する生態系は驚異的な速さで劣化。過去300年で85%超の地球上の湿地が喪失
- 飲料水、衛生施設、手洗い設備の目標を2030年までに達成するには、前進の速度を4倍にする必要がある(現在の速度では、2030年に16億人が安全に管理された飲料水を利用できず、28億人が安全に管理された衛生施設を利用できず、19億人が基本的な手洗い設備を利用できず)
7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
再生可能エネルギーに関する開発途上国向けの国際的な資金フローは2年連続して減少している。電力を利用できない人々の数は2020年で7億3,300万人存在する。
- エネルギー効率の向上は、世界が気候目標を達成するために加速させなければならない(エネルギー強度の改善率:2010-19年実績値は1.9%に対して、2030年までの要求値は3.2%)
- 再生可能エネルギーの総消費量は2010年から2019年の間に4分の1増加も、最終エネルギー消費量の全体に占める再生エネルギーの割合は17.7%(2019年)
8. 働きがいも経済成長も
世界経済の回復を遅らせる要因が複数存在し、従来の取り組みだけでは持続可能な経済成長は困難な可能性がある。
- 世界経済の回復を拒む要因が重層化している(新型コロナウィルス感染症の波、ウクライナ危機、インフレの高騰など)
- 世界の失業率は少なくとも2023年までコロナ禍前の水準を上回ったまま(2021年の世界の失業率は6.2%)
- 世界全体で10人に1人の子どもが児童労働に従事(2020年世界全体で1億6,000万人)
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
後発開発途上国や中小製造業など取り残されている人々や企業が存在する。ハイテク技術によるイノベーション促進し、領域展開する必要がある。
- 世界の製造業はコロナ禍から回復するも後発開発途上国は取り残されている
- ハイテク産業はローテク産業よりも危機における強靭性(レジリエンス)はるかに高い
- 小規模産業は復興に向けた資金援助を利用できず(小規模製造業の3社に1社のみが融資や融資枠の恩恵を受けている(2022-21年))
10. 人や国の不平等をなくそう
国家間の所得不平等が拡大。難民の数も過去最多になり、ウクライナ危機により更に増加する予測となっている。
- コロナ禍により国家間の所得不平等が一世代ぶりに拡大
- 世界の難民数は過去最多を記録し、ウクライナ戦争でこの人数はさらに押し上げ
- 5,895人の移民が2021年に命を落とした。5人に1人が国際人権法で禁止された理由のうち少なくとも1つの差別を経験
11. 住み続けられるまちづくりを
都市化が進む一方で、ごみ処理問題が増加。大気汚染を含め、都市化による社会課題解決が必要になっている。またスラム人口を減らす取り組みも喫緊の課題。
- 都市の成長に伴い自治体のごみ処理の問題が増加(世界的に自治体のゴミ処理は82%が回収され、55%は管理された施設で処理される)
- 世界の都市人口の99%は、汚染された空気を吸っている(WHOの最新の大気汚染ガイドラインによる)
- 誰一人取り残させないためにはスラムで暮らす10億人に対する重点的取り組みの強化が必要
12. つくる責任 つかう責任
生態系が再生できる分より多くの自然を取りだし利用している(生態系的赤字)状態が続いている。資源効率と省エネ促進を進め、持続的なインフラ整備を構築することが求められる。
- 消費と生産の持続不可能なパターンが地球の三重危機の根本原因(気候変動、生物多様性の喪失、汚染)
- 世界の食料のうち、収穫後小売市場に届く前に廃棄されている割合は13.3%に上る
- 食料全体のうち、消費者レベルで廃棄されている割合は17%に上る
- 天然資源への依存度は世界全体で2000年から2019年に65%に上昇している
- 世界の電気・電子機器の廃棄物の大部分が安全に管理されていない
13. 気候変動に具体的な対策を
気候変動対策は厳戒警報状態であり、その影響を回避できない状況に陥りつつある。
- 気候変動による惨禍を回避する機会は急速に減ってきてしまっている(サンゴ礁が消滅することで海水温度2℃上昇、海面は2100年までに30-60cm上昇、干ばつの影響で2030年までに7億人が故郷を追われる、中大規模災害は2015年から2030年で40%増加)
- エネルギー関連のCO2排出量は2021年に6%増加で過去最高水準に
- 気候変動対策資金年間1000億ドルに届かず(2019年に先進国が提供した資金は796億ドル)
14. 海の豊かさを守ろう
海洋と海洋資源の保全は喫緊の課題にある。マイクロプラスチックによる海洋汚染は日本周辺海域でも発生しており、世界の海の27倍と言われている。
- 地球最大の生態系である海は危機に瀕している(プラスチック/海洋汚染、魚の乱獲、酸性化、富栄養化、海水温度の上昇)
- 2021年には1,700万トン超のプラスチックが海洋に流れ込み、2040年までには2-3倍に到達する見通し
- 世界の年間CO2排出量の約4分の1を吸収している海洋の酸性化によって海洋生物が脅かされ、気候変動緩和する能力が制限される
15. 陸の豊かさも守ろう
海洋資源同様に森林資源の保全は喫緊課題であり、最たる原因は農地拡大。また、新型コロナウィルスの影響により生物多様性に対する支出が減少している。
- 1,000万ヘクタールの森林が毎年破壊されている
- 世界の森林破壊の約90%の原因は農地拡大
- 生物多様性は新型コロナウィルス感染症からの復興に向けた支出の中でなおざりに
- 約4万種が今後数十年で絶滅の危機に瀕するとされる
16. 平和と公正をすべての人に
ウクライナ紛争が国際平和へ大きな悪影響を及ぼしている。また、腐敗は世界各国で散見される状態で公正な社会と経済発展は道半ばの状態である。
- 世界人口の4分の1が紛争の影響を受けている国で暮らしている(2020年末)
- 過去最高となる1億人が世界各地で故郷を追われた(2022年5月)
- 腐敗はあらゆる地域で見られる(企業のほぼ6社に1社が公務員から賄賂を要求されたことがある)
17. パートナーシップで目標を達成しよう
ウクライナ紛争が国際平和へ大きな悪影響を及ぼしている。また、腐敗は世界各国で散見される状態で公正な社会と経済発展は道半ばの状態である。
- 債務負担の増大が開発途上国でのコロナ禍からの復興を脅かしている
- 2021年には、正味ODA総額は、主に新型コロナウィルス関連の援助によって1,776億ドルの過去最高に達した
- 外国直接投資は2020年から64%増加して1兆5,800億ドルに回復した
- 送金額は2020年から8.6%増加して6,050億ドルに達した
- SDGsデータに対するODAは2020年に18%減少した
中堅中小企業にとっての意味合いと示唆
SDGs17の目標を構造化すると、「経済領域(8、9)」「社会領域(1、2、3、4、5、11)」「環境領域(6、7、12、13、14、15)」「ガバナンス領域(10、16、17)」の4つに分類することができる。中堅中小企業においては、世界的視野を持った現状分析を踏まえつつ、取り組みは地に足の着いたSDGsイニシアチブを企画し、着実に実践することが肝要だと考える。また、17の目標に対して個別に対策するのではなく、各目標領域の関連性を踏まえた取り組みを進めることをお勧めする。リソースが限られている企業も多いため、課題を構造化すると同時に関連性を整理して、効率的にアクションを行っていくことが重要である。
例えば、「1.貧困をなくそう」と「質の高い教育をみんなに」は副ターゲットの関連性もあり、両者を統合したプログラム開発を検討することができる。平等で公平な教育機会の提供など、基礎的サービスが受けられる環境整備が求められる。また、「5.ジェンダー平等を実現しよう」と「8.働きがいも経済成長も」は、女性が平等に活躍できる環境や制度の整備など関係性が深い。「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と「13.気候変動に具体的な対策を」は、エネルギーと気候変動は切っても切り離せないテーマであるため、両方の主目標と副目標を照らし合わせ、必要なアクションを検討することをお勧めする。
最後に中堅中小企業は、SDGs達成に向けた取り組みについて、大企業とは異なりさまざまなリソースが不足していることが多い。今後は、個社の取り組みだけでなく、協働で取り組むことでよりインパクトある成果を目指すことも考えられる。業界の垣根を超えたSDGsイニシアチブが生まれ、少しでも社会課題解決に貢献できるよう支援していく。
SDGs17の目標と169のターゲット
SDGs17の目標と169のターゲットを一覧化し整理した。自社のSDGsイニシアチブを検討する際の参考にして欲しい。